2019デジタルアーカイブ産業賞 受賞内容

特別功労賞

  • 月尾嘉男 東京大学名誉教授

貢献賞

  • 株式会社ポーラ・オルビスホールディングス ポーラ文化研究所
  • 株式会社ケイズデザインラボ
  • 山川道子 株式会社プロダクション・アイジー
  • 福井健策 骨董通り法律事務所弁護士

技術賞

  • 凸版印刷株式会社「トッパンVR・デジタルアーカイブ」
  • 株式会社サビア「文化財に特化したスキャナ開発と活用」
  • 株式会社アルステクネ「アートとテクノロジーの融合による絵画のマスターレプリカ再現技術「リマスターアート」」

【受賞理由】

特別功労賞

◆受賞者名:月尾嘉男(つきお・よしお)

東京大学名誉教授。工学博士。
1990年代に「かつての図書館などの電子版」という意味から「デジタルアーカイブ」という言葉を我が国でかつ世界で初めて提唱した。その概念は「有形・無形の文化資産をデジタル情報の形で記録し、その情報をデータベース化して保管し、随時閲覧・鑑賞、情報ネットワークを利用して情報発信する」というデジタルアーカイブ構想に発展的にまとめられた。またそれを進めるためのデジタルアーカイブ推進協議会の設立にも大きく貢献された。
人々の生活水準を向上させ、新規の経済活動を活発にしながら、人類が蓄積してきた資産を後世に継承していく活動を担う「デジタルアーカイブ」の誕生と概念の普及に長年に渡って大きく寄与し、現在のデジタルアーカイブ発展の礎を築いたことにより、特別功労賞に相応しいと思料する。

貢献賞

◆受賞者名:株式会社ポーラ・オルビスホールディングス ポーラ文化研究所

ポーラ文化研究所は1976年創立で、「化粧」を核に化粧史や道具、時代風俗、美人観など幅広い分野を対象に研究活動を行なっている。研究成果としてレポート・書籍の発行、展覧会などの開催、専門図書館開設のほか、蔵書や収集資料をDB化して公開。昨年11月に公開された「化粧文化データベース」は、江戸時代の化粧道具や版画など貴重な品目も含む約1万点が収録され、デジタル画像とともに充実したメタデータも提供する。単に収蔵品を紹介するページを作成するだけでなく、メタデータを含むDBとして公開している点、また企業の持つ情報のDB化・公開を奨励する観点から、最近の事例「化粧文化データベース」を持つポーラ文化研究所は貢献賞に相応しい。

◆受賞者名:株式会社ケイズデザインラボ

K’s Design Labは、2006年の設立以来、3Dデータの作成・活用に関する高度な技術を有し、人体や舞踏、スポーツ、文化財や工業製品、医療品に至るまで、有機物・無機物を問わず幅広い物体・情報の3Dデータ化とその活用のプロデュース事業に取り組んでいる。また、その豊富なノウハウを基に3Dデータ活用に関するコンサルティングやトレーニングも提供しており、当該技術の更なる普及を積極的に進めている。
デジタルアーカイブ産業の裾野を三次元形状やその動きの3Dデータへと広げていくことへの貢献は極めて大きく、貢献賞として推薦されるに足る実績を有している。

◆受賞者名:山川道子(やまかわ・みちこ)

株式会社プロダクション・アイジー アーカイブグループリーダー。デジタルアーカイブのビジネス実務を切り拓かれるとともに、学会等において多数の示唆に富んだ発表を行い、大いにデジタルアーカイブ産業のパブリシティ向上に貢献された。具体的には次の3点で貢献された。
・ビジネスの現場で、長年、試行錯誤しながら、デジタルアーカイブを実践し、産業界における一つのベストプラクティスを構築された。
・デジタルアーカイブは多くの企業にとってコスト部門に留まっているところ、プロフィット部門になりうることを示し、産業発展の可能性や方向性を示した。
・学会等において、多くの発表を行い、デジタルアーカイブの実務を紹介し、会員へのよい刺激となった。以上により、貢献賞に相応しいと思料する。

◆受賞者名:福井健策(ふくい・けんさく)

骨董通り法律事務所 for the Arts 代表パートナー、弁護士。芸術・文化法、著作権法を専門分野とし、各種クリエイター、プロダクション、劇団、劇場、レコード会社、出版社など文化関連産業分野の権利処理問題等を長年に渡ってサポートしている。国立国会図書館納本制度審議会会長代理を始め、内閣府、経済産業省などの委員を歴任し、オーファン著作物の利用制度改革等著作権法及び関連法改正に対し、著作物の利用促進の観点から様々な提言を行なってきた。近年はデジタルアーカイブ及びデジタルアーカイブ産業の発展に向けた言論活動に力を注いでいる。また、メディアの露出も多く、実務者に対して著作権などをわかりやすく解説し、産業界におけるデジタルアーカイブの活用に資する知識の普及にも大きく貢献している。

技術賞

◆受賞者:凸版印刷株式会社「トッパンVR・デジタルアーカイブ」

トッパンVRは、高精細画像処理技術、色彩計測技術、三次元計測技術を核に彫像や絵画、絵巻などの文物から、それらが納められていた建物などの構造物、そしてその建物が存在していた空間まで、それぞれに適した手法を使ってデジタル化、保存・公開する手法を用いている。さらに、VRの映像をリアルタイムで生成し、臨場感と没入感のある仮想体験を提供している。普段は地下に埋もれ見ることができない遺跡や、簡単には訪れることができない空間を、文化財の調査・研究資料や三次元形状計測・色彩計測データを元に、目の前にいるかのように忠実に再現し、東京国立博物館内をはじめ国内に18拠点、海外に2拠点の専門シアターを展開するなど、VRの作成とその視聴環境提供の両輪でデジタルアーカイブの普及に貢献している。

◆受賞者:株式会社サビア「文化財に特化したスキャナ開発と活用」

デジタルアーカイブの対象となる文化財は多種多様で、データの活用目的もまた多様である。
そうしたデジタルアーカイブにおいてデジタル化の最初のステップとなるスキャニング(デジタル化)業務で、同社は常にユニークな機能を備えた高精度なスキャナの技術開発と業務実績を重ねてきた。
京都大学井出研究室の研究成果を元に同社が開発してきた多くの文化財専用スキャナは、大型の対象物や寺社の壁画など幅広い対象に対応できる国産のスキャナ技術として国内外の多様な文化財関係者から認められ多くの実績を重ねており、デジタルアーカイブ構築の基礎的な技術となっている。その貢献により技術賞の受賞に相応しい。

◆受賞者:株式会社アルステクネ「アートとテクノロジーの融合による絵画のマスターレプリカ再現技術「リマスターアート」」

株式会社アルステクネは「アートとテクノロジーの融合」を掲げ、10年以上の歳月をかけて技術研究を重ね、デジタルリマスター技術を駆使して絵画のデジタル化(リマスターアート)等を手がける企業である。
同社のリマスターアートは、フランスのオルセー美術館もマスターレプリカとして公認しており、同社独自の最先端デジタル画像処理技術DTIP(Dynamic Texture Image Prosessing)により、色相、彩度、明度に加え、二次元において三次元質感再現を含めた統合的な画像処理を行うことで、原画の持つ質感、色合い、筆さばきを限りなく忠実に再現している。
限りなく原画に近い視覚効果にすぐれたリマスターアートは取り扱いが困難な原画に変わり、学術・研究分野での活用はもちろんのこと、国内の教育現場での展覧会の実施など、デジタルアーカイブ利活用の一例としても積極的な活動を行っており、今後のデジタルアーカイブ発展への貢献が大きく期待される。