2020デジタルアーカイブ産業賞 受賞内容

 

技術賞

  • 「RCGS Collection」 立命館大学ゲーム研究センター
  • 「KuroNetくずし字認識サービス/くずし字データセット」ROIS-DS人文学オープンデータ共同利用センター(北本 朝展、カラーヌワット タリン)、KuroNet共同研究チーム(Alex Lamb, Mikel Bober-Irizar)、国文学研究資料館 古典籍共同研究事業センター

 

ビジネス賞

  • 肥田康 株式会社堀内カラー アーカイブサポートセンター 所長
  • 「マンガ図書館Z」 株式会社Jコミックテラス

 

貢献賞

  • 「東京藝術大学発ベンチャー」株式会社 IKI
  • 「デジタルアーカイブシステム「ADEAC(アデアック)」」TRC-ADEAC株式会社
  • 「阪神淡路大震災25年 激震の記録1995 取材映像アーカイブ」朝日放送グループホールディングス株式会社

 

 

【受賞理由】

 

技術賞

◆受賞者:「RCGS Collection」 立命館大学ゲーム研究センター

ゲームという幅広く使われる分野のデータを、標準技術JSON-LDによって記述し、データの機械可読性と再利用性を向上させた。研究資料としてだけでなく、新規ゲームの開発や流通に寄与する可能性がある。まだ発展途上ではあるが、オープンデータを産業に結びつけるための方向性を示す例として、推薦したい。

 

◆受賞者:「KuroNetくずし字認識サービス/くずし字データセット」ROIS-DS人文学オープンデータ共同利用センター(北本 朝展、カラーヌワット タリン)、KuroNet共同研究チーム(Alex Lamb, Mikel Bober-Irizar)、国文学研究資料館 古典籍共同研究事業センター

くずし字で書かれた文書は膨大であり、それらのデジタル化・解読によって、歴史的に貴重なさまざまな情報を得ることができる。特に各地方に存在する古文書などを解読することで、地域の未知の情報を発掘し、新たな地域振興や情報発信、ビジネス創造に結び付けることが期待できる。

 

 

ビジネス賞

◆受賞名:肥田康 株式会社堀内カラー アーカイブサポートセンター 所長

永年にわたりデジタルアーカイブ分野で多くの先端画像処理技術を取り入れ開発し、多様な対象を多様な目的に沿ってデジタル化するというデジタルアーカイブ特有の困難なビジネスモデルに挑戦し継続してきた功績は極めて大きい。
また、貴重な資料を取り扱うための特殊なスキルを要する現場作業において、事故なく業務を完遂しうる人材育成に努めた意義は、今後のデジタルアーカイブを支える意味でも重要である。
以下の実績の抜粋は、今日の日本のデジタルアーカイブの基盤をなすものと言える。
・京都大学附属図書館 電子図書館事業 ・東京大学史料編纂所 ガラス乾板デジタルアーカイブ事業 
・文化庁 国宝高松塚古墳壁画デジタルアーカイブ事業 ・キトラ古墳壁画デジタルアーカイブ事業 
・その他 公的機関 企業など多くの実績有

 

◆受賞名:「マンガ図書館Z」 株式会社Jコミックテラス

他の電子書籍配信サービスと異なり、基本的にマンガ図書館Zでは「絶版になったマンガ」や「単行本化されていないマンガ」を著作者の許可を得て公開している。これによって得られた広告収入を著作者に還元する、というのが基本システムであり、作品の配信による広告収入は著作権者に還元され、サービス側は手数料を取らないと言うモデルを構築した。そのスキームにより
・絶版を含むマンガ作品を生かす
・海賊版への対抗
・著作者へ還元できるビジネスモデルの構築
・日本にとっての重要な文化を守る、伝える
と言う効果を生んでいる。

  

 

貢献賞

◆受賞者:「東京藝術大学発ベンチャー」株式会社 IKI

文化外交、文化共有の推進、観光産業の発展支援、感性教育の推進を通じた社会貢献を目指して活動を開始。
昨今のデジタルアーカイブは、文化財活用への政策転換の中でさらにその価値を高めようとしているが、その情報の大むねの活用はデジタル情報の公開に留まっている場合が多い。
その中で、モノ→デジタル→モノへの回帰によるビジネス活用は、今後のデジタルアーカイブ技術の活用の一つの活路を示唆するものと言えよう。
実績抜粋:G7伊勢サミット展示、ミャンマー・バガン遺跡の複製壁画をミャンマー文化省へ寄贈、敦煌莫高窟、バーミヤン天井壁画、アブダビ国際会議参加ほかデジタルアーカイブ分野へ貢献。

 

◆受賞者:「デジタルアーカイブシステム「ADEAC(アデアック)」」TRC-ADEAC株式会社

以下の点が評価理由である。
(1)日本では自治体ごとに「点」で立ち上がってきたデジタルアーカイブだが、それを束ね、「面」で提供している点
(2)運用開始から8年あまりで、全国の図書館・大学等101機関のアーカイブを搭載してきており、2020年1月末時点で、メタデータ78,208件、画像35,459件、本文テキスト85,304件と、地道な努力だけでなく、搭載機関数で年間15%増(88→101機関)と急成長を遂げている点
(3)単にWeb上で公開、閲覧しているだけでなく、自治体での観光施策(浜松市)、リアルな展示との融合施策(船橋市)、地域学習支援(東京都瑞穂町、常総市)など、図書館が自治体や大学と連携した活動につなげており、今後のビジネス活用の可能性を開いたこと。

 

◆受賞者:「阪神淡路大震災25年 激震の記録1995 取材映像アーカイブ」朝日放送グループホールディングス株式会社

放送局がビジネスを直接的には考慮せず、社会課題に取り組んだ意義ある仕事。放送法における電波特権の条件である災害報道の意義を広くとらえた仕事として、企業の社会貢献事業的側面を評価したい。