2025 デジタルアーカイブ産業賞 受賞内容

ビジネス賞

株式会社ローカルメディアラボ

エチオピアにおけるデジタルアーカイブの挑戦

https://lm-labs.com/

地方IT企業としての高い技術力を背景に、エチオピア国立図書館相当の機関とMOUを締結するなど、アフリカ市場におけるデジタルアーカイブの社会実装に挑む先駆的なビジネスを展開。官民連携を通じた国際的なインフラ展開と、文化資源保存をビジネスとして成立させようとする強い意志は、日本のIT産業の新たな可能性を示す。

ユニバーサル・ビジネス・テクノロジー株式会社

高精度オーバーヘッドスキャナBookeyeシリーズの提供

https://www.ubtc.space/bookeye4-v1

高精度スキャナの導入障壁を下げ、国内の文化・学術機関に国際水準のアーカイブ技術を安定的に提供し、現場のニーズに応じた機種選定や運用支援、トラブル対応など、アーカイブ実務の効率化と標準化を後押ししてきた。これにより、限られた人員や予算の中でも持続的なデジタル保存が可能となり、文化資源の継承と公開を実現するための重要な基盤づくりに貢献している。

技術賞

株式会社NFTDrive

リアルタイム字幕入力などブロックチェーン技術を用いたデジタル記録の基盤づくり

https://nftdrive.net

アーカイブに求められる真正性・検証性・永続性を高水準で担保できる点で、従来の保存手段では対応しきれなかった課題への解決策を提示している。特に、公的記録や知識資源など改ざんが許されない情報の保存において、ブロックチェーンならではの信頼基盤を提供しうる点が評価される。記録の価値を長期にわたって保証し、第三者による検証を可能にする仕組みは、アーカイブの社会的機能を技術的に強化するものと言える。

株式会社NTTデータ

「fowald®(フォワルド)」アプリおよび「IPFS(分散型ストレージ)」の活用

https://www.nttdata.com/global/ja/news/topics/2024/080701/

市民参加型アプリ「fowald®」によるデータ収集と、分散型ストレージ「IPFS」による保存を組み合わせることで、特定の組織の管理能力に依存しない、持続可能なデジタルアーカイブのあり方を実証した。特に、クエスト形式による一般参加者の投稿データを、ネットワーク全体で分散保持するIPFS上で実運用し、その技術的課題と可能性を検証した点は、次世代のアーカイブ構築における極めて重要な実践である。

TOPPAN株式会社

失われた文化財のデジタル推定復元

https://www.holdings.toppan.com/ja/news/2024/07/newsrelease240704_1.html

失われた屏風を単に模写して再現するのではなく、学術監修者の高度な知見をデジタル上で統合・解析し、推定再現されたプロセス自体を「アーカイブデータ」として蓄積・活用する革新的な手法を確立した。高精度のデジタル彩色と特殊な印刷技術を融合させ、データから現物の屏風へと再構築する一連のプロセスを開拓したことは、技術的に極めて独創性が高い。本手法は、歴史的な美術品のみならず、文化的価値を有する企業の消失資料の復元などにも幅広く適用可能な汎用性を備えており、デジタルアーカイブを「過去の保存」から「未来への再生」へと進化させる実用的な指針を提示した。

貢献賞

株式会社ブレインテック

小規模館向け図書館システム「情報館」へのデジタル資料公開機能の実装

https://braintech.co.jp/products/jhk/

予算や専門技術の制約から、高額な専用システムの導入を断念せざるを得なかった多くの小規模機関に対し、既存の業務システムの延長線上でアーカイブ運用を開始できる「現実的な解決策」を提示した功績は極めて大きい。デジタルアーカイブを特別なものではなく、あらゆる図書館にとっての日常的な機能へと進化させ、地域資料や文化資産の散逸を防ぐための強力な基盤を提供した。この長年にわたる図書館支援の姿勢と、アーカイブの民主化に寄与した点を評価する。

群馬県

群馬デジタルミュージアム事業

https://www.pref.gunma.jp/page/679978.html

全国の博物館が文書や文化財といった資料のデジタルアーカイブ化を進めているなか、デジタルデータにすることで貴重な資料が多くの人に共有され、学習や文化芸術活動に役立てられるモデルケースであり、体験を「有料」にて提供したことは、持続可能な博物館事業のパイロット事業と言える。
本取組みは、地方自治体による文化政策の新たなモデルケースとして、全国に広がる可能性を秘めている。

Cultural Japan

世界の文化機関が公開する日本文化資源の集約・横断検索システム

https://cultural.jp/

世界中に分散する日本文化情報を集約・構造化し、検索と活用のための基盤「Cultural Japan」を構築した功績は多大である。特に、多様なデータソースを横断的に結びつける「データのつなぎ役」としての役割は、他にはない独創的かつ極めて高い実用性を有している。デジタルアーカイブの相互運用性を飛躍的に高め、文化資源の発見と二次活用を促進した。

大日本印刷株式会社

アートスケープ/artscapeの30年にわたる継続・維持

https://artscape.jp/

1995年のオープン以来、30年の長期にわたり美術館・博物館と生活者を結ぶアート情報発信を牽引し、アートメディア「artscape」を継続・発展させてきた功績は極めて大きい。
単なる情報ポータルに留まらず、開始当初からの膨大なコンテンツを散逸させることなく維持・公開し続けている点は、それ自体が現代の展覧会史を物語る「生きたデジタルアーカイブ」として比類なき価値を有している。民間企業として、文化芸術の基盤を支える社会的責任を長期間果たし、アーカイブの継続がいかに重要であるかを体現した。

奨励賞

株式会社NTTデータNJK

STYLY.bizによるAR骨格標本の実現

https://www.njk.co.jp/case-report/417

「STYLY.biz」を活用し、AR空間上で骨格標本を「拡大する」「回す」「つかむ」「移動する」といった操作を、自身の素手で直感的に行えるUI/UXを実現した。路上博物館との連携により、デジタルアーカイブを単なる「閲覧」の対象から、子供たちが自らの手で自由に扱える「触知的な体験」へと進化させ、新しいユーザー体験を創出し、深い興味と学習意欲を喚起した功績は大きい。

みんキャプ運営委員会

市民参加型の3Dデジタルアーカイブ活動「みんキャプ」

https://2022.minc.app/

3Dスキャン技術を活用し、市民や中学生と共に地域の文化遺産をデジタル化した「ぼくらのみんキャプデジタル博物館」の構築は、アーカイブの民主化を象徴する画期的な取り組みである。「toMap」による地図と連動した立体展示や、中学生が主体的に博物館資料を記録する教育連携など、最新技術を地域の知の継承と次世代育成に結びつけた点は極めて意義深い。「みんなで保存し、みんなで創る」という共創型の保存・発信モデルの先駆性を高く評価する。

株式会社ユーカリヤ

アーカイブス可視化ツール『Re:Earth』を活用した表示環境の継続性担保

https://eukarya.io

汎用的デジタル地球儀「Re:Earth」を開発し、オープンソース手法によってデジタルアーカイブの持続可能な可視化基盤を確立した。既存のプラットフォームでは困難であった「表示環境の継続性」という課題に対し、ソースコードのオープン化とビジネスモデルの両立を模索しながら、自治体や研究者へ汎用性の高いツールを提供した功績は大きい。

石川県

令和6年能登半島地震アーカイブ

https://noto-archive.pref.ishikawa.lg.jp/

令和6年能登半島地震の発生直後から、被害状況や復旧・復興の過程、そして被災者の生の声に至るまで、極めて迅速かつ体系的に記録・保存した取り組みを高く評価する。映像やテキストに加え、3Dモデルやトークといった多角的な手法を用いることで、物理的な被害のみならず人々の体験や記憶を立体的にアーカイブした点は、災害記録のあり方として秀でている。過去の震災経験を深化させ、今まさに進む復興プランをも網羅する本活動は、単なる記録保存を超え、未来の防災・減災を支える不可欠な社会インフラを構築するものと言える。